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中外製薬株式会社様

導入サービス
課題
通信の品質に不満がある
成果
7倍のスピード向上で研究所業務が大幅に改善
国内外において革新的な医薬品の創出に取り組む中外製薬。
国内の抗体医薬品市場、がん領域、骨粗鬆症領域ではトップシェアを確保し、個別化医療に基づく創薬・開発についても日本市場の牽引者を自負する。それらの業務を後方から支援するITインフラ部門では、研究開発と営業活動の両面にわたるスピード向上が課題。
データセンタを仮想的に統合することで、プライベート/パブリッククラウドとして利用する新たな情報戦略が進む。各データセンタ間や各拠点─データセンタ間をつなぐネットワーク基盤として選ばれたのが、当社の高品質専用線サービス「ダイナイーサ」だった。

お客様概要

企業名:
中外製薬株式会社
業種:
製造業(製薬業)

1925年創立の大手医薬品メーカー。2002年にロシュとの戦略的アライアンスを締結。同年、日本ロシュと合併し、新生中外製薬が誕生。インフルエンザ薬「タミフル」の発売元としても知られる。ロシュ・グループ入りを通して、低分子医薬品の研究開発や、ゲノム抗体創薬、次世代バイオ医薬などへの挑戦が進む。本社・東京都中央区。

導入フロー

導入の背景

課題1データ処理の膨大化に伴い、データセンター間のネットワークを増強したい。

当社の提案
速度が距離に影響される広域イーサのネットワークに代えて、より遅延が少ない専用線サービス「ダイナイーサ」を提案した。

課題2積極的かつタイムリーな情報活用を行うために、クラウドの活用をしたい。

当社の提案
ネットワーク・インフラの増強で複数DC間のデータ連携を密にすることで、統合的なクラウド環境の実現し、各DCごとのシステム構築コストを削減することを提案した。

導入のポイント

POINT1研究所とデータセンタ(以下DC)間ネットワークの遅延を飛躍的に解消した。

POINT2各DC間のネットワーク増強により、統合的なクラウド環境を実現。

POINT3障害時の対応など不測の場合の対応力を最も重視。

POINT4複数のDCを同一ネットワークで接続するため、レイヤー2の活用は必須条件。
ダイナイーサはマルチプロトコルに対応するので条件を満たしていた。

導入の効果

効果17倍のスピード向上で研究所業務が大幅に改善。

効果2プライベート/パブリッククラウド活用がさらに前進

ネットワーク構成図

インタビュー

石堂 孝夫 氏

中外製薬株式会社
情報システム部
IT インフラグループ
ネットワークチーム

導入の背景

研究や営業の最前線で高まるデータ活用。拠点間・DC間のデータ連携が急務に

ヒトゲノム計画によるDNA塩基配列の解読技術が医療や製薬ビジネスを大きく変えつつある。大量の遺伝情報を瞬時に取得することで、同じ病気であっても、疾患の個人差に応じた治療法を適用することができるようになった。中外製薬は、この「個別化医療」に基づく創薬・開発で国内市場をリードする企業だ。

「個別化医療というニーズに応じた創薬のためには、研究所における膨大なデータ処理が不可欠。創薬に必要な情報がいままでの何十倍にもなります。鎌倉と御殿場の2つの研究所における業務をより効率的に進めるために、データセンタ(以下、DC)間のネットワークの増強や、DC統合によるクラウド活用が求められるようになりました」
というのは、同社情報システム部でITインフラの管理を担当する石堂孝夫氏だ。

もう一方で営業現場における情報活用も、製薬業界における重要なトレンド。近年はMR(医療情報担当者)が医師の目の前でPCやタブレット端末を開き、医薬品のセールスプロモーションや品質や安全性などに関する情報の提供を行うシーンがよく見られる。タイムリーな情報提供にあたっては、クラウドの活用が大きな課題になっていた。

現在は集約されて国内3箇所(DR=ディザスタリカバリを含む)にあるDCだが、以前は4箇所に分散されており、DC間の統合やデータ連携はほとんど意識されていなかった。情報系、基幹系など目的別のDCをそれぞれ利用するという形態。また事業拠点とDC間は、通信大手が提供する広域イーサネットサービスを利用しており、当面はそれで十分という認識だったという。

しかしその再考を促したのは、大規模なシステム故障に耐えるDRの必要性だった。 「関東圏におけるDR構築は2009年ごろから具体化しており、そこで初めて丸紅アクセスソリューションズの専用線サービスを導入しています。その頃は同時に複数のDCが停止することはないだろうと考えていたのですが、"3.11"の大震災を通して、同一の電力会社管轄下にDCが複数あると、電力供給の不安がより高まるという教訓を得ました。そこから急きょDRの西日本移転を含めた、DC間ネットワークの再構築が検討されるようになりました」(石堂氏)

導入の経緯

クラウド活用で再認識された高品質専用線の利点。選定にあたっては故障時対応力を重視

複数のDC間をつないだプライベートクラウドの構想やDC内における仮想化技術の導入は2009年ごろから進められていたが、ネットワーク基盤として当初は専用線の利用はほとんど意識されていなかったという。 「ネットワーク担当の私自身に専用線への固定観念があったんですね。当社でも1990年代に各拠点を専用線で使っていたのですが、それを、より網構成の自由度が高く、価格も安価な広域イーサネットで置き換えたという経緯がありました。専用線で各拠点を結ぶという発想自体がもはや過去のものだという認識だったのです。ところが、クラウドという新しい考え方が浮上するにつれて、広域イーサに代わるものとして、高品質な専用線の活用が重要だというように、次第に考え方が変わってきました」
専用線サービスの検討を始めるにあたっては、もう一つ次のようなきっかけがあった。

「データ漏洩を未然に防ぐため、ローカルのPC上ではなく、データはすべてDC上のファイルサーバに保存するように利用法を変えたことがあります。トポロジー的に近い場所にあるDCでは問題がなかったのですが、遠い場所を利用するようになった拠点からは、"以前に比べてネットワークが遅くなった"というクレームが殺到しました。均一サービスのはずの広域イーサとはいえ、DCへの距離の違いで国内でもこれだけの差があるのかと驚いたことがあります。こうした問題を解決するうえで、最近の専用線サービスの内容を調べてみることにしました」(石堂氏)

クラウド活用という新しいニーズが、専用線にあらためて光を当てたことになる。 複数事業者の専用線サービスを比較検討するなかで、「ダイナイーサ」が選ばれたのは次のような理由からだ。
「ネットワークには使ってみないとわからない要素があります。何か起こったときの会社としての対応力が最も重視したところです。また、仮想化技術を利用するためには、複数のDCをユーザーからは同じネットワーク上にあるように見せたいので、レイヤー2の活用は必須条件。マルチプロトコルに対応している『ダイナイーサ』はその条件を最初から満たしていました」

導入の効果

7倍のスピード向上で研究所業務が大幅に改善。プライベート/パブリッククラウド活用がさらに前進

まずメインDCとインターネット接続を担うサブDCを結ぶ回線が2011年11月に、鎌倉と御殿場の研究所をメインDCと結ぶ専用線が同年12月に開通、さらに2012年5月には西日本に新規に構築したDRも専用線で接続された。現在、4本の「ダイナイーサ」(1Gbps)が拠点─DC、DC─DC間を結んでいる。そのうち、DRと結ぶ1本の回線は来年度にも増速する計画がある。すでにDRへのバックアップ需要が、帯域の7割を占めるまでになっているからだ。

研究所の一つで生じた遅延の頻発。広域イーサネットワークを利用していたときと比べて、ネットワークスピードの改善効果はどのようなものだったのか。 「研究所のシステム担当者が、ダイナイーサ導入前後に、研究所間および研究所・DC間のベンチマークを取ったところ、広域イーサで接続されていたときから、約7倍のスピード向上があったという報告を受けています。ファイル転送やメール送受信などの日常業務を含め、すべての業務で遅延の不安がなくなり、大幅な業務改善効果が見られます。また、導入後一度も故障が発生していない。この安心感も含め、現場のユーザからは非常に感謝されています」と、石堂氏。

かくしてネットワーク・インフラの増強で複数DC間のデータ連携が密になり、統合的なクラウド環境としての活用が現実のものとなった。 「これは、各拠点、各DCごとにシステムを構築する必要がなくなったということ。システムコスト全体を考えれば、一見高価に思える専用線のコストは十分に吸収されており、きわめてコストパフォーマンスの高いシステムが構築できたことになります。この点は、専用線導入を進めるうえで訴求ポイントの一つ。社内を説得するうえでも、このポイントを強調することは重要でした」

中外製薬におけるオンプレミスからクラウドへのシステム移行は今後も進む。

「Microsoft Exchange Server で構築されているコミュニケーション系システムを、今後は外のパブリッククラウドで運用する計画があります。すでに情報システム部では実験的な運用を始めており、来年度にはこれを全利用者に広げていきます」と石堂氏はクラウド活用の今後を展望する。

スイス・ロシュグループの一社として国際連携を強める中外製薬。研究所間のデータ連携はグローバルベースで進んでいる。それを支える国際ネットワークの増強が次の課題になるだろう。

中外製薬の「ダイナイーサ」によるネットワーク再構築を担当した丸紅アクセスソリューションズの営業担当・近藤貴之(営業本部営業第二部課長)は、「専用線は一見他社との差別化がしにくい商品だが、低遅延であることや当社の総合力を信頼して選択していただいたことに感謝している。今回のケースでは、クラウド活用を強めるIT戦略から実際の活用フェイズに至るまで、貴重な勉強をさせていただいた」と語っている。

本紙に記載されている会社名、製品名は、各社の登録商標または商標です。

事例記述内容は取材当時のものです。

丸紅アクセスソリューションズ株式会社とは、アルテリア・ネットワークス株式会社の取材当時の旧社名です。