クレッセントでは、数多くのボリュメトリックビデオの撮影・編集とインターネット配信の品質向上のため、通信回線の強化に着手した。強化の中心になったのが、ボリュメトリック 4DView専用スタジオ「Digi-Cast」のリニューアル。1Gbpsだったインターネット回線を10Gbpsに強化。その回線の候補に挙がったのが、アルテリア・ネットワークスの「UCOM光 ファストギガビットアクセス 10Gbps」だ。また、映像の安定的な配信のためにインターネット回線を冗長化し、お客様がAWSに用意した配信サービス用の環境に接続する専用線にもアルテリア・ネットワークスの回線サービスを採用し、全社の通信回線の強化が図られることになった。
- 導入サービス
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1社専有型による上下最大10Gbpsの高速・大容量インターネット接続サービスです。
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2拠点間を結ぶ完全帯域保証型イーサネットインタフェースの専用線サービスです。
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お客様のイントラネットとクラウドサービスを閉域ネットワーク経由で接続が可能なサービスです。
- 会社名
- 株式会社クレッセント
- 本社所在地
- 東京都江東区木場3-14-8
- 設立
- 平成11年3月
- 事業内容
- ・画像処理ソフトウェア・ハードウェアの輸入、販売、サポート
・画像処理プログラムの開発販売、サポート
・画像機器の開発、販売、サポート
・画像コンテンツの開発・制作援助
導入の背景
ボリュメトリックビデオ・サービスの品質向上のため、インターネットと社内回線を強化
ボリュメトリックキャプチャ分野の先駆者的存在であるクレッセントは、2020年、4DViews専用のスタジオ「Digi-Cast」の大規模な改修をスタートさせた。その背景には、増え続けるボリュメトリックビデオのニーズにこたえるという目的があった。
「映像やCMを見るプラットフォームが、TVからインターネットやYouTubeに急速に移行しています。ボリュメトリックビデオも同様に、エンタメ・スポーツ・ゲーム領域にとどまらず、eコマースや研修教材など、様々な業界での活用が広がりだしました。さらに、メタバース(仮想空間)に用意したバーチャルオフィスに現実の人物を登場させ、行動できる技術としてボリュメトリックキャプチャが有力視されています。こうした将来性を見据え、『Digi-Cast』の全面改修を決定しました」(小谷 氏)。
「400万画素カメラ48台の新規導入、複数名を同時に撮影できるキャプチャエリアの拡大など、リニューアルオープンに向けて準備が進む中、通信回線の強化が必要不可欠という問題が浮き上がってきた。数年前は、スタジオで撮影したボリュメトリックビデオのデータをお客様に渡せば業務完了だった。しかし、現在は撮影からインターネットを介した配信までを一括で行うサービスが求められているからだ。「今までライブ配信などでは複数の1Gbpsインターネット回線をパラレルでつなぎ、ビデオを配信したりしていました。しかし、撮影機器の機能向上によって高品質で大容量の映像データを、同じ方法で安定的に配信することは不可能です。スタジオのリニューアルにあたり、インターネット回線の強化と専用線を導入することが必須要件になっていました」(本間 氏)。
導入の経緯
大容量のデータ配信のため、10Gbpsとネットワークのプロフェッショナルを選択
通信回線を高速化・大容量化するため、クレッセントはまず通信回線の要件やネットワーク構成などを社内でまとめ上げた。対象の回線は次の3つ。1つ目は本社スタジオと近隣の第2スタジオがインターネットに接続する回線。2つ目は本社とスタジオを結ぶ専用線。3つ目は本社とスタジオとAWS(Amazon Web Services※)クラウド間の専用線。いずれも、映像を高品質な状態で途切れることなく配信するために強化が求められる回線だ。特に本社とスタジオがインターネットに接続する回線は非常に重要なため、通信速度10Gbpsを条件にインターネット接続サービス探しと検討が進められた。
「当時、10Gbpsのサービスは少なく、コンシューマ向けの一般的なサービスばかりでした。ボリュメトリックビデオのデータを問題なく流すための10Gbps回線とネットワーク構築のノウハウを持つプロフェッショナルなNIer(ネットワーク・インテグレータ)が見当たらず、困りました。そんな時、ボリュメトリック関連のイベントで知り合った丸紅株式会社の方から『グループ会社の中に、法人向けに10Gbpsのインターネット接続サービスを提供しているアルテリア・ネットワークスがある』と聞き、すぐにホームページを検索し、コンタクトをとりました」(小谷 氏)。
※ アマゾン ウェブ サービス、AWSは、米国その他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。
1Gbpsから10Gbpsへの移行に伴う通信インフラ構築全体をサポート
2020年8月、クレッセントから要件を聞いたアルテリア・ネットワークスの担当は、最初、10Gbpsのインターネット回線と専用線のみを提案する予定だった。しかし、詳細のヒアリングを進めると、10Gbpsに対応したスイッチやルーターの導入も必要だとわかり、ネットワーク機器とAWSクラウドにつながる専用線も含めた提案で、クレッセントの通信インフラ構築をサポートすることになった。
近くの電柱からビルの上層階に10Gbpsのインターネット回線を引き込み、2階のスタジオまで開通させる敷設工事もアルテリア・ネットワークスが実施。また、不測の事態が発生した場合でも映像配信が続けられるように、本社とスタジオそれぞれの10Gbpsインターネット回線を冗長化して可用性を高めることにした。10Gbps対応のスイッチやルーターのリプレースには既存製品の上位版を予定していたが、当時、その国内メーカーに取り扱いがなく、これらもアルテリア・ネットワークスが手配し、その設置や設定なども行った。
社内環境の全面10Gbps対応は、ステップを踏んで進める計画で、今回のリニューアルでは、一部のPCやネットワーク機器が10Gbps対応のものにリプレースされた。しかし、1Gbps対応と10Gbps対応の機器が混在したため、Wi-Fiにつながらないという予期せぬトラブルが発生した。
「30名ほどのクライアントの関係者がスタジオに来られ、撮影・編集した映像をご自身のPCで視聴し、チェックすることがあります。その時、Wi-Fiにつながらないということは絶対に許されません。アルテリア・ネットワークスの方は懸命に原因を調べ、リニューアルオープン前までに問題は解決されました。10Gbps環境の構築・運用に多くの実績とノウハウを持つアルテリア・ネットワークスだからこそ、クリアできたと感じました」(本間 氏)。
「アルテリア・ネットワークスの営業の方は、Wi-Fiのトラブル対応も含め、どんな問題や要望にも真摯に取り組んでくれます。2020年8月の依頼から2021年4月のプレオープンまでの、わずか8ヵ月でスタジオを稼働開始させたいという超短納期の要望も実現してくれました」(小谷 氏)。
導入の効果
ボリュメトリック映像の利用や制作するための通信インフラ基盤を実現
2021年5月のリニューアルオープン以降、ボリュメトリック映像サービスへの依頼は増えている。大容量のデータ配信に対応したことで、お客様がスタジオ外からでも映像をチェックしやすくなり、利便性も高められた。また、Wi-Fiはトラブルもなくつながり、スタジオを訪れた大勢のお客様も快適に利用でき、スタッフはスタジオのどこにいてもインターネットや社内サーバーに接続し、業務を行っている。ただ、今回の10Gbpsインターネット回線や専用線の導入などは、クレッセントの事業拡大に向けた計画の一部と言える。
「ボリュメトリック映像のニーズ拡大を予測し、大容量のデータに対応するための回線の増強だったので、その目的は達成されました。ただ、本社内とスタジオ内の10Gbps対応はまだ一部で、これから段階的に進める予定です。通信インフラ強化の効果をすべて手にするのは、まだ少し先ですね」(本間 氏)。
今後の展開
通信に関するノウハウの提供を受け、ニーズを先取りした通信環境の強化を続けたい
時期は未定ながら、各フロアの1Gbps対応のL2スイッチを10Gbps対応のものに入れ替え、社内LANの高速化も予定されている。多くの映像撮影・編集業務に対応するため、10Gbps対応のPCの台数を増やしていくと、LANの高速化は必ず必要になる。その際も、アルテリア・ネットワークスが最適なネットワーク構成づくりから支えていくことになる。
「私たちが必要とする通信環境は、一般企業のように『一度構築したら完成』というものではありません。映像内容や撮影・配信技術の進化、イベント内容などに応じて通信環境をスピーディに変化させていく必要があります。そのために、通信回線のプロとしてのノウハウの提供をアルテリア・ネットワークスに期待しています。今回のリニューアルを通じてクレッセントのビジネスをよく理解してもらったので、私たちに伴走して、スピード感のあるサポートをお願いしたいと考えています」(小谷 氏)。
ボリュメトリックキャプチャシステム 4DViewsとは
ボリュメトリックキャプチャシステム 4DViews紹介動画
ボリュメトリックキャプチャシステム 4DViews撮影イメージ紹介動画
▼3D映像を撮っている実際のスタジオ
ボリュメトリックキャプチャシステム 4DViewsは、撮影対象の360度バーチャル3Dオブジェクトを生成して、AR(拡張現実)やMR(複合現実)空間に表示できる技術だ。例えば、ダンスをする人物の体の動きから表情、衣装・小道具まで、空間全体をまるごと3Dスキャン撮影し、同時に高精細な360度バーチャル3Dオブジェクトを生成。その3D映像に時間軸を加えた4Dデータとしてストリーミング配信することや、CGで作成した背景を組み合わせることも可能。視聴者は前後・左右・上下など、自由な視点から映像を見ることができる。