京都府に本社を置き、自社データセンターでホスティングサービスなどを展開するカゴヤ・ジャパンは、同社にとって3つ目となるIPトランジットサービスをアルテリア・ネットワークスから導入した。その目的の1つは、同社のサービスを利用するお客様企業とトラフィック量の増加に対応した帯域拡張。もう1つの目的は、BCP(事業継続計画)対策。トランジットの接続先を、関東にあるアルテリア・ネットワークスの大容量IPバックボーンにすることで、万が一、関西圏で大規模災害が発生しても、地理的に離れた関東から通信を維持し続けられるネットワーク環境が整備された。
- 導入サービス
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通信事業者向けに提供する広帯域・高品質なトランジット接続サービスです。
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2拠点間を結ぶ完全帯域保証型イーサネットインタフェースの専用線サービスです。
- 会社名
- カゴヤ・ジャパン株式会社
- 本社所在地
- 〒604-8166 京都市中京区三条通烏丸西入御倉町85-1 KDX烏丸ビル 8F
- 設立
- 1983年9月22日
- 従業員数
- 107名(2021年3月現在)
- 事業内容
- インターネットデータセンターの運営事業、レンタルサーバー事業、クラウドサービス事業、インターネット関連サービス事業
導入の背景
トラフィック量の増加による帯域不足を3つ目のトランジットの追加で解決
日本で商用のインターネット接続サービスが始まった1992年から間もない1998年に、ISP事業を開始したカゴヤ・ジャパン。2006年には自社データセンター(DC)を建設し、現在はホスティングサービスやクラウドサービスなど、幅広い事業を展開している。
カゴヤ・ジャパンでは、自社保有のDCを自社の技術陣と保守部隊が24時間体制で運用しており、お客様の要望に合わせた柔軟な環境構成と運用が可能だという。また、ネットワークの設計からサーバーや環境のスムーズな移行、きめ細かな運用サポートを自社で行っている。このような独自性の高い強みにより、カゴヤ・ジャパンのサービスを利用する企業は、全国各地に広がり、お客様増に伴うトラフィックの増加に対応するためのネットワーク帯域の拡張が急がれていた。 この問題に対応したのが、サーバーやネットワークなどのインフラ設計・構築・運用を担当するインフラ開発チームだ。
「2020年、既に関西でISP事業者2社からIPトランジットサービスを導入していました。しかし、今後のトラフィック量の増加に、現在の帯域では耐えられないことが試算でわかり、トランジットの追加を決定しました。2社のいずれかから追加する手もありましたが、別のISP事業者からの導入検討を進めました」(インフラ開発チーム)。
導入の経緯
同業種への豊富な導入実績と大容量バックボーン、BCP対策も考慮した回線の冗長化の提案が選定の決め手に
新規のISP事業者を4社に絞り、2019年の年末ころから、各社の見積もりや提案をもとに選定が進められ、最終的にアルテリア・ネットワークスが選ばれた。
「選定のポイントはいくつかありました。1つは、弊社のようなホスティング事業者などへの導入実績が豊富なこと。また、データセンターや大容量のバックボーンを自社で保有し、高品質・大容量の接続性を低価格で提供していること。そして最大の選定ポイントは、私たちの要件定義書にはなかった冗長化の提案です。アルテリア・ネットワークスの専用線設備を利用して東京側への回線の冗長化を図ることで、BCP対策を強化することにしました」(インフラ開発チーム)。
単に低価格というだけでなく、実績に裏付けされた構成や品質により、アルテリア・ネットワークスの「VECTANT IPトランジットサービス」が3つ目のトランジットに選ばれ、2020年8月に運用を開始。3社それぞれから4Gbpsのトランジットを利用することで、お客様の増加に対応するためのトランジットが確保された。 「しかし、今後トラフィックが増え続ければ、数年で契約帯域を超えることが試算されていました。トランジットは従量課金制で、コミット値を超えた分だけ追加料金が発生します。お客様が増え、トラフィックが増えれば、トランジットのコストが膨れ上がる問題への対応も必要になってきました」(インフラ開発チーム)。
IX接続によるピアリングを併用することでトランジットのトラフィックコストを削減
2022年、3社とトランジットの契約更改時、アルテリア・ネットワークスはカゴヤ・ジャパンのトランジットのトラフィックコスト問題を解決するために、もう一歩踏み込んだ案を提示した。 「その提案は、” IX事業者を介して各ISP事業者とピアリングを張れば、トランジットに流れるはずのトラフィックの追加料金が発生しない”という内容でした。それではアルテリア・ネットワークスの利益にならないので、本当にいいんですか?と聞き返しました」(インフラ開発チーム)。
従量課金が発生するトランジットではなく、ピアリングの利用を提案した背景に、お客様のトラフィックコストを低減し、より良い通信環境や通信経路を提供したいという考えがアルテリア・ネットワークスにあるからだ。さらに、IX接続ポイントにつなぐことで、そこに接続する複数のISP事業者とトラフィック交換が可能になり、通信先への最適な経路を選択できるなどのメリットが多い。
コスト削減数値の予測ときめ細かな導入支援を受け、一度は断念したIX接続を改めて本格的に導入
カゴヤ・ジャパンは、10年ほど前の一時期、自社でIX接続を導入していた。 「IX接続に必要な専用線に約150万円、IXポート1Gbpsに約100万円、合計約250万円もの料金が毎月発生していました。しかし、当時のトラフィック量は少なく、現在の総トラフィック量の20%ほど。これでは費用対効果が低すぎるとの判断から、IX接続をあきらめました。また、ピアリングの設定やピアリング先への申請手続きは非常に煩雑で、“IXはしんどい”と当時の担当者から聞いており、トラフィックコストの問題解決にIX接続を利用することなど、私の頭にはなかったです」(インフラ開発チーム)。
そんな不安や疑問を解消するため、アルテリア・ネットワークスは、カゴヤ・ジャパンのトラフィックデータを調べ、トラフィック削減による費用対効果の予測を提出。さらに、ピアリングを許可してくれる宛先のリストアップや、ピアリング接続に必要なパラメータの設定方法などの説明を行った結果、IX接続の導入が決定した。2022年5月から、アルテリア・ネットワークスの営業や技術者のサポートを受けながら導入作業を進め、8月からIX接続の運用を開始している。
アルテリア・ネットワークス 提供サービス (1)インターネット接続サービス「VECTANT IPトランジットサービス」 (2)VLAN(Virtual LAN)接続サービス (3)イーサネット専用線「ダイナイーサ」(トランジットの接続点までのネットワーク提供のため)
導入の効果
3ヵ月で全トラフィックの20%をピアリングに振り分け、2024年にはトランジットの超過料金が相殺される見込み
トランジットとIX接続の導入効果は、すぐに出たという。 「2022年8月のIX接続の導入効果は、運用開始からわずか3ヵ月で出ました。全トラフィックの20%をピアリングで流せており、当初は今年度中(2022年度中)に10%までいければと予想していましたが、3ヵ月ほどで目標達成です」(インフラ開発チーム)。 IXとの接続には、トランジットの専用回線を論理的に2つに分割し、1本をトランジット、もう1本をIXとの接続に使用している。そのため、回線を増やさずに接続先が増やされ、コスト削減が図られている。
「このIX接続を導入したおかげで、トランジットの次回の契約更新時期(2024年度)には、予測されるトランジットの超過料金がほぼ相殺される見込みです。アルテリア・ネットワークスからIX接続の提案がなければ、トランジットのコストは増え続け、事業が立ち行かなくなっていたかもしれません」(インフラ開発チーム)。
今後の展開
カゴヤ・ジャパンのお客様が必要とするサービスにネットワークインフラとノウハウを発揮して欲しい
「トランジットとIX接続の導入で、ネットワーク系の増強は図れました。今後はトラフィックの増加を見据え、ルーターやスイッチ類の強化も必要です。また、西日本でのIX接続の追加を考えており、次の契約更新時にアルテリア・ネットワークスからの提案をいただきたいと思っています」(インフラ開発チーム)。 この要望を受けたアルテリア・ネットワークスは、最適な通信機器類の提案と合わせ、ネットワーク全般の運用をリーズナブルな料金でアウトソーシングできるマネージドサービスを紹介する予定だ。
「アルテリア・ネットワークスは、全国規模の専用ネットワークを構築できる数少ない企業の1社です。そのネットワークインフラとネットワークに関する技術ノウハウを、カゴヤ・ジャパンのお客様企業のさまざまな要望に応えるために、発揮していただきたいと思っています」(インフラ開発チーム)。
担当営業コメント
お客様ネットワークの最適化およびコストダウンにつながる提案を、SEと一丸になって実施させていただきました。本案件を通じ、お客様の立場に寄り添いお客様の期待を超える提案の考え方を学び、自身も成長することができました。また、アルテリア・ネットワークスは、2023年1月より欧州のネットワークが集積するロンドンに自社保有のIPバックボーン網の延伸・拡張を行うなど、提供する通信サービスのさらなる品質向上・強化を行っています。低価格なサービスだけでなく、高品質なサービスを長期に渡り弊社サービスをご利用頂けるよう、今後も最適な提案を行っていきたいと思います。
営業本部 中部営業部
中部営業チーム
岸田 泰治