ネットワークのトラフィックは、デジタル化やデータ活用の進展、さらに近年のテレワークの普及で急速に増加し、ときにネットワークの「輻輳(ふくそう)」を引き起こします。輻輳はデータ量に対して、ネットワーク機器の処理が追いつかなくなった状態のことを言います。輻輳が発生すると「業務システムが使えない」「クラウドにアクセスできない」などの影響が生じます。ここではトラフィックが増加する原因とその影響、トラフィック増加への対策などを取り上げます。
トラフィックとは
通信におけるトラフィックとは、LANなどの社内ネットワーク、あるいはインターネット接続回線などにおいて、一定時間にネットワークを流れるデータ量を表します。社内における大容量のデータのやり取りや、社外とのビデオ会議が多数行われることで、ネットワーク上に大量のデータが流れることを「トラフィックが増える」などといいます。
企業のネットワークを安定して運用するためには、日常的にトラフィック量を監視し、ネットワークの帯域を圧迫していないか、ユーザーがストレスなく利用できているかを把握することが不可欠です。また何らかの要因でトラフィックが突然増え、遅延などを引き起こすこともあります。そうした際に影響が広がらないよう、あらかじめ対策を取っておくことが重要になります。
ネットワークのトラフィックが増加する原因
メールやチャット、テレワークによるビデオ会議の増加といったコミュニケーションの変化から、オンラインストレージなどを活用したデータの一元管理や共有、売上データ・経営データの収集、IoTの活用まで、今やネットワークを利用せずにビジネスを行うことはできないと言っても過言ではありません。ビジネスにとってネットワークの役割が大きくなったことで、企業のネットワークを通るトラフィックも増加しています。
具体的にどのようなことが原因でトラフィックが増加しているか見ていきましょう。
データ量の増加
パソコン、スマートフォンやタブレットといったデバイスから、IoT機器まで、ビジネスに活用できるハードウェアが登場し、高画質な写真や動画、売上データや顧客の購買データなど、扱うデータ量が増えたことで、トラフィックの増加につながっています。また、OSのアップデートや大容量データのダウンロード、ライブ配信など想定を超える突発的なトラフィックの集中は「バーストトラフィック」と呼ばれ、ネットワーク運用の課題の1つになっています。
クラウド化
インターネットを介して利用するクラウド(SaaS)が普及したことで、業務中は常に通信が発生するようになりました。1つ1つは小さなトラフィックですが、オフィス全体、会社全体では、大きなトラフィックになります。つまり、社内システムのクラウド化や、クラウドサービスの利用を検討する場合は、トラフィックに対応して、ネットワーク(特にインターネット接続回線)の見直しが必要になります。顧客管理、人事管理はもちろん、銀行が勘定系システムをクラウド化するような事例も生まれ、クラウド化は企業システム・企業ネットワークの大きなトレンドになっています。
社外からのアクセスの増加
昨今、働く場所が多様化したこともトラフィック増加につながっています。リモートワークが普及し社外から社内システムにアクセスするトラフィックが急増しました。コロナ禍での緊急事態宣言発令をきっかけに、日本のインターネットのトラフィックは増加傾向にあります。社内ネットワークのトラフィック増加による影響
トラフィック(traffic)は、もとは「交通(量)」「通行(量)」という意味の単語です。ネットワーク上をデータが行き交う様子を、車が道路を行き交う様子に例えたものです。ネットワークのトラフィックが増加すると、車が増加して道路が混雑し渋滞するように、ネットワークも混雑して遅延が発生します。いわゆる「輻輳」です。
輻輳は、ネットワークを流れるデータが増え、ネットワーク機器の処理が追いつかなくなることで発生します。ネットワーク機器での処理待ちが増え、ネットワークの速度が低下した状態を指します。さらにデータが増えて状況が悪化すると、ネットワーク機器はデータを処理せずに破棄する「パケットロス」が発生します。データが破棄されると送信元の機器は再送信を行い、データの破棄、再送信というプロセスが繰り返されて輻輳が続いてしまいます。
輻輳が発生するとユーザーにとっては「業務システムが遅くて、仕事が進まない」「クラウド上のサービスにアクセスできない」「Webページが更新されず固まる」などのトラブルが発生し、ビジネスに大きな影響を与えてしまいます。
ネットワークのトラフィック増加への対策
ビジネスへの影響を踏まえて輻輳が発生しないよう、事前に十分な対策を取っておくことが必要になります。ここでは主な3つの対策を取り上げます。
回線の増強
1つ目は回線の増強です。契約している回線のトラフィック量を確認し回線のプランの見直しを行います。
インターネット接続に「共有型」のサービスを使っている場合は、1本の光ファイバーを自社だけで利用できる「専有型」のサービスに切り替えると、より安定したインターネット接続を実現できます。
さらに、回線事業者の選択も重要な視点になります。一般的に共有型のサービスは、インターネットサービスプロバイダ(ISP)とアクセス回線事業者がわかれていることが多く、輻輳が予測されたとしても設備増強に時間がかかることがあります。プロバイダ・回線一体型の事業者であれば、必要に応じて迅速に設備増強を行うことができ、輻輳を未然に防ぐことができます。
ネットワーク機器の増強
2つ目は、ネットワーク機器の増強です。特に社内ネットワークで遅延が発生している場合は、トラフィックが集中している部分、いわゆるLANの基幹部分のネットワーク機器を増強します。ルータやスイッチ、ハブなどを増強することで、社内ネットワーク全体の速度が改善することもあります。
社内LANを構成しているネットワーク機器、拠点間接続に使っているVPNルータ、社内ネットワークから社外のインターネットに接続するためのルータなど、ネットワークのボトルネックとなっている箇所を特定し、機器を増強します。
ネットワーク環境の見直し
3つ目は、ネットワーク環境の見直しです。社内LANの場合、基幹部分の機器を増強することに加えて、機器を冗長化し負荷分散することで通信の安定につながります。また、万が一インターネット回線に障害が発生した場合に備えて、複数のインターネットサービスプロバイダ(ISP)と契約し複数の回線を利用する「マルチホーミング」を選択肢に入れることをお勧めします。
その他、インターネットの接続方式の見直しも有効です。従来使われている「PPPoE」を、イーサネットを前提に開発された「IPoE」に切り替えることで、より快適で・高速なインターネット接続が実現できます。なお、IPoEの利用には、現状主流となっているIPv4のアドレスをIPv6に対応させる「IPv4 over IPv6」の導入が必要となります。
「IPv4とIPv6の違い」や「PPPoEとIPoEの違い」の詳細はこちら
ネットワークのトラフィック増加には先手の対策を
最近では、あらゆる業務がインターネットを介して行われるようになり、トラフィックが予期せず急増することもあります。ビジネスにおいてネットワークの重要性が益々高まる中、トラフィックが増加する原因と影響を理解し、先手の対策を打つことが重要になってきます。
アルテリア・ネットワークスでは、お客様の環境や用途に合わせて帯域や保証内容を選択可能な、複数の回線サービスをご用意しています。先を見据えた回線増強に最適な、上下最大100Mbps~10Gbpsの豊富な回線メニューを取り揃えた「UCOM光 ファストギガビットアクセス」など、お気軽にお問い合わせください。
アルテリア・ネットワークスの法人向けインターネット接続サービスについて、違いを解説したホワイトペーパーをご用意しています。合わせてご参考にしていただけますと幸いです。