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Wi-Fi7とは?規格の詳細やWi-Fi6(6E)との違い、無線LAN環境づくりのポイントや事例


Wi-Fi7はWi-Fi6(6E)に次ぐ次世代のWi-Fi規格です。Wi-Fi7とそれ以前の規格の大きな違いは、通信速度です。現在主流の規格であるWi-Fi6(6E)と比べると、Wi-Fi7ではより高いスループット(単位時間あたりに処理できるデータ量)を実現するように設計されています。

このようにWi-Fi7は「速さ」で注目されていることはわかりますが、実際にどのようなメリットやデメリット、特徴があるのかわかりにくいかもしれません。

そこで本記事では、Wi-Fi7とは何か、その規格の詳細やWi-Fi6(6E)との違い、無線LAN環境づくりのポイントと事例について紹介しています。これからオフィスや店舗等で無線LANの見直しをお考えのご担当者様は、ぜひご一読いただき、参考にしていただけると幸いです。

Wi-Fi7とは

Wi-Fi7は2023年12月22日に解禁された、最新の無線インターネット通信規格です。IEEE※1(米国電気電子学会)という団体が「IEEE 802.11be」という規格を策定し、Wi-Fi Allianceという業界団体が「Wi-Fi7」という新名称で案内しています。近年、Wi-Fi AllianceによりWi-Fi規格を「Wi-Fi○」(○部分に続き番号が入る)という形で表記するようになり、多くのユーザーがWi-Fi規格をより認識しやすくなりました。

Wi-Fi7の最大の特徴は、2.4GHz、5GHz、6GHzという3つの周波数帯をすべて利用できるだけでなく、新たに導入されたマルチリンク機能により、これらの帯域を同時使用できるようになったことでしょう。

しかし、すべてのWi-Fi7対応機器がWi-Fi7の機能に完全対応している訳ではありません。それぞれの機能を端末で利用するためには、Wi-Fiルーターだけでなく、端末もその機能に対応している必要があります。

IEEE=Institute of Electrical and Electronics Engineers

 
失敗しない、オフィスや店舗の無線LAN環境の見直し方

Wi-Fi7に関する用語

Wi-Fi7と他の規格との違いを理解するうえで、用語を知るとさらに理解が深まります。ここではWi-Fi7に関する用語を解説します。

①周波数帯

周波数帯とは、無線通信を行う際の電波周波数の範囲を示しています。数値が高いほど高速となり、Wi-Fi7で使用できる周波数帯は2.4GHz、5GHz、6GHzの3種類です。

2.4GHz、5GHz、6GHzの周波数帯は、それぞれ1秒間に24億、50億、60億の波を描きながら進みます。これは「マイクロ波」と呼ばれ、この波=周波数の値が大きいほど通信速度は高速になります。


②帯域幅

帯域幅とは電波の周波数の幅です。具体的には、通信に用いる一番低い周波数と一番高い周波数の範囲を指します。また数値が高いほど一度に多くの情報が送信可能となり、狭いと少なくなるため、帯域幅が通信速度を表すように使われることもあります。

道路にたとえるなら車線の幅のようなもので、幅が広がれば、同じ時間内で通過する車の量が増加するようなイメージになるでしょう。 Wi-Fi7では帯域幅がWi-Fi6(6E)の160MHzから320MHzになったため、2倍の通信速度が実現できます。

 
Wi-Fi7 帯域幅

③変調方式

変調方式は、デジタルデータを電波として送信する際に、最適な電気信号に変換する仕組みのことです。Wi-Fi7ではWi-Fi6(6E)の1024QAM(10bit)※から 4096QAM(12bit)に増加したため、変調にかかる時間が1.2倍効率化されます。そのためオンラインゲームのラグ低減や、自宅からの快適なライブ配信を実現しやすくなります。

 

QAM:電波や電気信号のやり取りにおける変調方式。QAMの数値が高いほどより多くの情報を一度に伝送可能。

Wi-Fi7 変調方式

④ストリーム数

ストリーム数とは電波の通り道のことです。道路にたとえると、車線の本数と言えます。アンテナ1本につき、1つのストリームを持ち、電波の通り道が多い(=ストリーム数が多い)ほど、高速通信が可能になります。Wi-Fi7は、ストリーム数を8から16に増やすことで、理論上の物理伝送速度がWi-Fi6(6E)の2倍になりました。

 
Wi-Fi7 ストリーム数


⑤MLO(Multi Link Operation)

従来のWi-Fiデバイスは、データ送信時に2.4GHz、5GHz、6GHzのいずれかの帯域で接続していました。Wi-Fi7ではMLO技術により、複数の周波数帯を同時に利用できるようになりました。この技術により、通信容量が拡大し、通信速度がアップするだけでなく、遅延が起きにくく途切れにくいといった通信の安定化が期待できます。


⑥Preamble Puncturing

従来は電波干渉が発生するとチャネルの分断が起き、輻輳(ふくそう)※の原因になっていました。しかしWi-Fi7ではPreamble Puncturingという技術により、電波干渉や使用中のチャネルをブロックすることでチャネルを効果的に利用することが可能です。
 

輻輳:一箇所に集中する状況のこと。通信分野の用語では、インターネット回線や電話回線にアクセスが集中することを指す。

Wi-Fi6(6E)など他の規格との違い

Wi-Fi7とWi-Fi6(6E)や他の規格との違いについて3つのポイントに絞って解説します。

①最大通信速度がWi-Fi6(6E)と比較して約4.8倍に

Wi-Fi7で最も注目すべきは、周波数や帯域幅の性能アップにより、従来のWi-Fi6(6E)よりもはるかに高速化した点です。Wi-Fi7では最大通信速度が46Gbpsまでアップし、Wi-Fi6(6E)の9.6Gbpsに比べ約4.8倍の高速化が実現されるようになります。


②帯域幅とストリーム数が2倍に。情報伝達量が増加

帯域幅を車線の幅、ストリーム数を車線の数と考えた場合、それぞれが2倍に増加したことで情報伝達量が増加しました。Wi-Fi7は、帯域幅を160MHzから2倍の320MHzに拡張し、ストリーム数を8から16に増やすことで、理論上の送受信データ量と速度が2倍になります。


③新たに搭載されたMLOによって「途切れにくい」無線LAN環境に

MLO機能によって複数帯域を同時に使用できるため、通信速度の向上と通信の安定化が期待できるようになります。Wi-Fi6Eでは6GHzも利用できますが、使用できるWi-Fiの帯域は1つです。一方MLOを利用すると、2.4GHz、5GHz、6GHzのうちから、複数の周波数帯を同時に利用できるようになります。

通信速度が向上することに加え、干渉波があっても影響のない周波数帯を利用することで、「途切れにくい」無線LAN環境が構築できます。

Wi-Fi7のメリットや利用シーン

Wi-Fi7を導入した場合のメリットや利用シーンについて、シチュエーションごとに紹介します。

①オフィスでの利用シーン

近年、フリーアドレスの導入によりオフィスでの無線LAN利用が増加しつつあります。また、会社のゲストルームやエントランスなどでフリーWi-Fiを提供したり、従業員同士がオンライン会議をしたりと、ここでも無線LANを利用するケースが増加しました。

以前の通信規格であれば、帯域がひっ迫し、通信が途切れるなどのトラブルが発生することもありましたが、Wi-Fi7であればそうしたリスクを軽減することが可能になります。

②店舗などでの利用シーン

新型コロナウイルス感染症が拡大した以降は、非対面接客のニーズが増加しました。飲食店などの店舗ではタッチパネルでの注文が普及し、カフェなどリモートワークのスポットとなる場所では、フリーWi-Fiの提供もめずらしくありません。

また、顧客に対し快適な無線LAN環境を用意することは、飲食店などの店舗にとっても重要になってきました。Wi-Fi7であれば、利用者の増大や複数のWi-Fi機器を同時接続したとしても、快適なインターネット環境を構築しやすいでしょう。

③家庭での利用シーン

家庭で4Kや8KなどのUHD(Ultra-High Definition)動画を視聴したり、VRコンテンツなどを利用したりする場合、Wi-Fi7であれば動画のスキップや長いバッファ時間が発生することなく、快適に動画を視聴できます。

また、テレワークでオンライン会議をしている最中に子どもがオンラインゲームをしたり、家族の誰かがストリーミング動画を視聴したりと、複数人が同時にインターネットを利用することもあるでしょう。しかし、Wi-Fi7であれば途中で通信が途切れる心配がなく、安定した接続が期待できます。

失敗しない、オフィスや店舗の無線LAN環境の見直し方

Wi-Fi7に関するよくある質問

Wi-Fi7に関するよくある質問について紹介します。導入のヒントにしてください。

①Wi-Fi7はいつから日本で利用できるようになるの?

2023年12月23日、総務省は電波法施行規則を改正し、新たな無線LAN通信規格として「Wi-Fi7」の利用を認可しました。現行ではすでに利用できるようになっています。また解禁が報じられると、各社からWi-Fi7に対応したルーター製品などの発表もあり、2024年には関連機器の販売もされるようになりました。

②Wi-Fi7は今すぐ必要?導入すべき?

Wi-Fi7は、高速で快適な無線LAN環境が構築できる可能性を秘めていますが、まだ対応機器は多くありません。また、実用化されて間もない規格であるため、仮に通信障害などが起こった場合に、原因の切り分けなどがしにくいといった課題もあります。

そのため安定した通信環境を構築したい場合、2024年12月現在ではまだ対応機器が充実しているWi-Fi6やWi-Fi6Eを採用する企業が多いのが現状です。

③Wi-Fi7に対応したルーターやスマートフォンはいつ販売されるの?

2024年10月時点で、WI-Fi7に対応した無線LANルーター、Androidスマートフォンなどが発売されています。また、iPhone16シリーズ(iPhone16/16 Plus/16 Pro/16 Pro Max)がWi-Fi7に対応しています。

ただしパソコンの中には、320MHz対応と記載されていながら160MHzしか使えないといった場合や、320MHzに非対応とされているが実際は使えるといった場合などが混在しているようです。このようなことから、Wi-Fi7対応機器の購入に対しては、十分に確認したほうがよいでしょう。

オフィスや店舗の無線LAN環境を整備するうえで重要なこと

最新規格であるWi-Fi7は、オフィスや店舗、家庭での無線LAN通信を大きく変える可能性があります。ただし、通信規格自体がまだ新しい規格であり、その分利用実績が少ないということも留意しておきましょう。

Wi-Fi規格のパフォーマンスを最大限発揮するためには、使用する機器側がその規格に対応している必要があります。さらに重要なことは、ベースとなるインターネット回線の通信速度が早く、安定していなければ、Wi-Fi機器を変更しても通信環境が改善するとは限りません。無線LAN環境の見直しを検討する場合は、インターネット回線の見直しとセットで考えることが大切です。

無線LANやインターネット回線を見直し、通信速度を改善した事例

アルテリア・ネットワークスにご依頼いただき、無線LANやインターネットの見直しをするとともに、通信速度を改善されたお客様の事例をご紹介します。

①快活フロンティア様

全国に502 店舗を展開するシェアリングスペース「快活CLUB」をはじめ、3業態のサービスを展開している快活フロンティア様。毎年店舗数が増加しているため、通信コストがかさみ、フリーWi-Fiの通信速度が低下していました。

既存の回線を活かした閉域VPNサービス「VECTANT クローズドIPネットワーク」を介して、AWSのPOSシステムと通信を行い、通信品質はそのままでコストの削減に成功。また、高品質なインターネット接続サービス「VECTANT ブロードバンドアクセス(クロスパス)」を導入することでWi-Fi速度低下の問題を解決し、お客様に快適な利用環境を提供できるようになりました。

快活フロンティア様 導入事例

②ソフトクリエイト様

システムインテグレーターとしての長年の実績を活かし、IT基盤のコンサルティング、設計・構築、保守・運用までトータルでサポートするソフトクリエイト様。しかしテレビ会議とリモートアクセスが増加したことでWi-Fiでのネットワーク品質が悪化していました。

そこで「UCOM光 ファストギガビットアクセス上下最大10Gbps回線」を導入し、ネットワークの品質向上と運用改善を実現。それに加えて、回線がボトルネックとなって実施しにくかったリアルタイム配信も開催可能になりました。その結果、オンラインセミナーの可能性が大きく広がりました。

ソフトクリエイト様 導入事例

まとめ

Wi-Fi7は、Wi-Fi6(6E) と比較しても通信効率や遅延が改善された新時代の無線規格です。本記事でも紹介したように、最大通信速度は Wi-Fi6(6E)の4.8倍となり、「MLO」や「320MHz幅通信」といった機能を実現しました。

また、変調方式や最大ストリーム数、最大帯域幅が大幅に改善されたことで、最大通信速度が46Gbpsまで増加します。それに加えてMLO(Multi-Link Operation)といった新機能が追加されたことで、通信遅延や安定性に期待が持てるでしょう。

ただし、現在ではWi-Fi7に対応しているルーター機器やモバイル端末などが少ないだけでなく、実用化されてまだ間もないことから通信障害が起こった場合に対応しにくいという問題もあります。そのため、安定した通信環境を構築したい場合は、現在主流のWi-Fi6やWi-Fi6Eへの切り替えが無難と言えるでしょう。

これから無線LANやインターネット回線を見直し、通信速度を改善したいというご希望がある場合は、ぜひ一度アルテリア・ネットワークスにご相談ください。企業によって求められるネットワーク構成や条件はさまざまです。アルテリア・ネットワークスなら、複数のソリューションやノウハウを組み合わせ、貴社に合ったオーダーメイドの環境を構築します。

記載されている会社名、製品名、サービス名、ロゴ等は各社の商標または登録商標です。

記載されている情報は2024年時点での情報です。