近年、業務のデジタル化によりインターネットの利用が増えています。インターネット利用が当たり前の社会では、業務中に通信速度が遅いと社内クレームが入るなど、従業員が求める通信品質も高くなります。
通信速度を改善する手段のひとつとして、PPPoE接続からIPoE接続へ変更する方法があります。IPoE接続を導入すると通信が安定し速度が改善するため、通信速度の遅延に悩む多くの企業から注目されています。
今回の記事では、PPPoE接続とIPoE接続 の違いや、インターネット通信に欠かせない2種類のIPアドレスとの関係を紹介します。さらにIPoE接続における課題を解決し、社内で高速インターネット環境を整える方法もお伝えするので、ぜひ参考にしてください。
通信の仕組み:IPアドレスとは
インターネットを経由する通信は、IPアドレスを元にデータのやりとりを行います。IPアドレスとはインターネット上の住所のようなもので、専用機器(モデムやルータ)や端末(パソコンやスマホ)に固定もしくは動的に割り振られています。現在はIPv4と呼ばれる通信規格がIPアドレスとして主に使用されていますが、ほぼ枯渇状態にあり、次世代の規格としてIPv6と呼ばれるアドレス体系への移行が進んでいます。
また、アドレス数がIPv4は2の32乗個であるのに対し、IPv6は2の128乗個あり、IPv6のアドレス数はIPv4に比べて圧倒的に多いです。IPv4のアドレスが枯渇していることも踏まえると、今後はIPv6を使用した通信が増えてくると予想されています。
IPv4接続とIPv6接続 の違い
IPv4とIPv6の違いとして、アドレス数以外にプロバイダへの接続方法、速度と安定性、セキュリティ、閲覧可能なWebサイトが挙げられます。それぞれの違いを表で見てみましょう。
IPv4 | IPv6 | |
---|---|---|
接続方法 | PPPoEのみ対応 | PPPoEとIPoEに対応 |
速度と安定性 | PPPoE接続では通信速度が低下し、不安定になることも | IPoE接続では通信速度が速く、安定しやすい |
セキュリティ | 通信データの暗号化や改ざんを検知するプロトコル「IPsec」は必須ではない | 通信データの暗号化や改ざんを検知するプロトコル「IPsec」が必須 |
閲覧可能なWebサイト | IPv4に対応したWebサイト | IPv6に対応したWebサイト |
そもそもIPv4は「Internet Protocol version 4」、IPv6は「Internet Protocol version 6」の略称です。それぞれインターネット上の決まりごと(プロトコル)の第4版、第6版であることを表しています。
IPv4はPPPoE接続のみに対応し、IPv6はPPPoEとIPoE接続にも対応可能です。PPPoE接続は通信速度が遅くなりやすく、IPoE接続の速度は速く安定しやすい傾向があります。
IPv4では、通信データの暗号化や改ざんを検知するプロトコル「IPsec」の利用は必須ではありません。対するIPv6ではIPSecが必須であるため、IPv6の方が高いセキュリティを担保しているといえます。
またIPv4とIPv6は相互に互換性がなく、それぞれに対応したWebサイトしか閲覧できません。通信速度の速いIPoE接続とIPv6で利用する場合、IPv4に対応したWebサイトの閲覧には「IPv4 over IPv6」という技術が必要です。IPv4 over IPv6については、後の章で詳しく解説します。
PPPoE接続とIPoE接続を比較
PPPoEとIPoEの接続方式と、IPアドレスとの関係性を以下の表にまとめました。PPPoE接続では、どちらのIPアドレスを使っても通信が不安定になることがあります。IPv6 IPoE接続なら、通信速度は速く安定的である点が特長です。
PPPoE接続 | IPoE接続 | |
---|---|---|
概要 | 従来の接続方式。網終端装置を経由するため、通信量が増加するとトラフィックが混雑する | 次世代の接続方式。網終端装置を使用せず直接インターネットへ接続するので、通信速度は速く安定しやすい |
IPv4 | 通信速度は不安定で遅延することも | なし |
IPv6 | 通信速度は不安定で遅延することも | 通信速度は速く安定的 |
PPPoEの特徴
PPPoEは「PPP over Ethernet」の略称で、電話回線で通信を行う際のルールである「PPP」(Point-to-Point Protocol)を、Ethernet上での通信へ応用した接続方法です。従来、インターネットへの接続は電話回線からプロバイダを介しており、その時から使用されている接続方式がPPPoEです。IPoEよりも長く使用されているため、PPPoEは利用者が多く、今でもIPoEより一般的です。しかし、PPPoEはプロバイダのネットワークを通る際にユーザー認証が必要で、インターネット接続にはパスワードが求められるため手間がかかります。
またPPPoE接続で通信をする際、「網終端装置」という機器を必ず通過します。網終端装置とは、光回線とインターネットサービスプロバイダ(ISP)を接続する機器のことです。
業務のデジタル化や大容量コンテンツの使用で通信量が増え、網終端装置にトラフィックが混雑することで帯域が逼迫し、「輻輳(ふくそう)」と呼ばれる通信速度の遅延が生じてしまいます。
IPoEの特徴
IPoEは「IP over Ethernet」の略称で、Ethernet上で使用する前提で開発された接続方式です。直接プロバイダのネットワークに接続するため、ユーザー認証をせずにインターネットへ通信することが可能です。また、網終端装置を経由せずにインターネットへ接続します。終端装置を経由しない分、輻輳が発生しないため通信速度は安定します。快適な通信環境を実現するには、通信速度の速いIPoEでの接続がおすすめです。
しかし、現在のところ一般に使用しているアドレスはIPv4が主流のため、PPPoEに比べ、IPoEの接続方式で通信できる範囲は狭くなります。
IPoE接続を導入する際は、IPv6の通信のみに対応するのではなく、IPv4のアドレスでも通信できる環境を整えることが求められます。
【ミニコラム:PPPoEパススルーとは】
ネットワークに詳しい方の中には、「PPPoEパススルー」という用語をご存知の方もいるかもしれません。
PPPoEパススルーとは、その名の通りルーターの中を素通りさせて、ネットワーク内の端末で直接インターネット接続を行うことです。「PPPoEブリッジ」と呼ばれることもあり、PPPoEパススルーに対応したルーターを使用する必要があります。
PPPoEパススルーでは、ルーターに接続はしますが内部のPPPoE機能を使わず、端末側のPPPoE機能を使う点が特徴です。IPoE接続している際、何らかの理由で特定端末のみPPPoE接続させたい場合などに利用されます。個人用途では、オンラインゲームでグローバルIPアドレスをゲーム機器に割り振る際などに使われています。
またIPv6のみに対応しているルーターでは、IPv4対応のWebサイトは表示できません。そこでPPPoEパススルーを活用すると、ルーターを素通りさせて接続できるため、IPv4対応のWebサイトも閲覧できるようになります。
IPoEの接続方式でIPv4のアドレスを利用する方法
前述した通り、IPoEの接続方式で通信するためには、IPv6をIPv4へ変換する環境を整える必要があります。その変換する技術を「IPv4 over IPv6」と呼びます。
IPv4 over IPv6は、IPoEの接続方式のままでIPv4・IPv6両方の通信を可能にします。 つまり、IPv4 over IPv6を導入することで、通信速度を安定させつつ、IPv4を使用している従来のWebサイトやサービスも利用することが可能となります。
まとめ
本記事では、PPPoE接続とIPoE接続の仕組みやインターネット速度の改善方法を解説しました。
通信速度を改善するひとつの解決策として、PPPoEからIPoEに変更し、IPv4 over IPv6を利用する方法が挙げられます。
しかし、これまでIPoE接続方式を社内で利用したことがない場合、PPPoE接続からIPoE接続へ変更する方法や手順がわからず、お困りかもしれません。
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